海奈のバレンタイン

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【side 海奈】  白雪さんにチョコを渡しに行く姉さんの背中を押して、俺は姉さんの部屋から自分の部屋に帰ろうとしていた。  バレンタイン……俺にはちょっと縁がないイベントだな。だって……俺は、女子として生きようとは思えないから。  学校に通っていた時も、同じクラスの女子達が好きな人にチョコをあげようと躍起になっているのを見て、一緒にはしゃげない自分に違和感を感じてた。  なんで自分は女子らしくあれないんだろう。なんで好きな人を作れないんだろう。なんでバレンタインで盛り上がれないんだろう……。そう悩んじゃうから、バレンタインは寧ろ苦手だったな。 「はぁ……」  嫌なことを思い出して、少し溜息が出てしまう。  あー、ダメだダメだ!こんな気持ちで過ごしてちゃ、悪い1日になる。  俺は変わったんだ。自分らしく生きるって決めたし、そんな俺のことを仲間達も認めてくれた。それでいいじゃないか。  とりあえず、今日を良い1日にしよう。そんで、バレンタインを克服するんだ。 「……よし。俺も何か自分にお菓子でも買ってこようかな」  そう思って、財布を取りに自室へ急いでいる途中……。 「み、海奈!」  背後から深也の声に呼び止められた。
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