柊のバレンタイン

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【side 柊】  明日はバレンタインデー。女の子達の、勝負の日。とはいえ、私には付き合ってる人は居ないから他の人より気楽なんだよな。  でも、お世話になった人や友達にはチョコを用意したい気もする……。そんなことを考えながら、私はバレンタインフェアが開催されているお菓子屋さんのディスプレイを見ていた。  ふと、四角くてコロコロした小さなチョコレートのセットが目に入る。デコレーションも可愛いし、これをみんなに配ろうかな?  箱を手に取って、レジへ向かおうとすると、制服を着た女子高生2人とすれ違った。おさげにした髪型の女の子が、ショートカットの女の子を小突きながらニヤニヤしてる。 「ねぇ、咲ちゃんは田中にチョコ渡さないの?」 「え!?でも、別に付き合ってないし……」 「でも、笑顔が好きだって言ってたじゃん!これを機に告っちゃいなよ!ね?」 「うぅ……でも上手くいくかどうか……」 「大丈夫だって!私も応援するから!ずっと片思いしてきたんだし……誰よりも田中のことが好きな自信、あるんでしょ?」 「……うん」  ショートカットの女の子は顔を赤くしながら頷いて……ハート型の箱に入ったチョコレートのセットを手に取った。 「私、頑張って渡す」 「よし!ほら、買ってきな」  おさげの子に背中を叩かれ、ショートカットの子がレジに向かっていった。  いいなぁ……青春だなぁ。
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