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「ちゃんと渡せるといいな……」
そう呟く燕さんの手を、ボクは優しく握った。
「大丈夫です!ボクも、応援してますから」
ボクはそう言って、ニッと笑ってみせる。すると、燕さんも笑顔を作って頷いてくれた。
「……うん。ありがとう」
でも、その表情はまだ固くて……何か話題を変えようとして、ボクはふと気づいた。
……ボク、聖夜さんに何も準備してないな。
もちろん、燕さんから聖夜さんを盗ろうなんてこと考えてないし……聖夜さんへの恋心とは、もう決着を付けたんだけど。
それでも……ボクにとって聖夜さんは大切な人だから。
「……燕さん、ボクも何か聖夜さんにあげたいです。あの……一緒に選んでくれますか?」
「あ、いいよ。そうだよね。花束できるまで、色々見てみようか」
燕さんの表情から、緊張の色が少し消えた。それに安心しつつ……ボクは、色とりどりの花を物色する。
美しい花々の中でボクの目を引いたのは、黄色くて可愛らしい花……フリージアだった。
花言葉は……『感謝』。
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