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2月の海風は、やっぱり少し冷たい。燕さんの吐く息も、少し白かった。
浜辺へ降りる階段に差し掛かった時……浜辺で海を見ている、花束を持った男の人がボクの視界に入る。
聖夜さんだ。よく見ると……あの花束、青い薔薇でできてる。やっぱり……あのお姉さんの義弟さんは、聖夜さんだったんだ。
ということは……聖夜さんが燕さんを呼び出した理由も、きっとボクの読み通りだろう。
なら……ボクは、あそこには行けない。
「燕さん、ボク……ここで待ってます」
ボクはそう言って、階段の前で立ち止まった。
「え……?でも……」
「行ってください。ボクの花は、後からでいいですから」
そう言って、精一杯笑顔を作るボク。でも、燕さんはまだ納得できてないみたいで、
「遠慮とか、しなくていいんだよ?ホープ君にとっても、聖夜さんは大事な人でしょう?」
と、心配そうに尋ねる。
……そうだよ。ボクにとって、聖夜さんは大事な人だけど……でも。
「燕さんも、ボクにとっては大事な人なんです」
そう。ボクを直してくれた燕さんも、ボクにとっては大事で……。2人には、絶対に幸せになって欲しい。今は、そう心から思えるから。
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