ホープのバレンタイン

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「だから……聖夜さんと、ゆっくりお話して来てください。日頃の想いとか……ちゃんと伝えてきてください。ボクと一緒に……なんて、ダメです。燕さんとボクじゃ、想いの意味が違うから」 「ホープ君……」  燕さんは、まだ少し心配そうな顔をしていたけど……ボクの笑顔を見て、頷いた。 「……分かった。気を遣ってくれてありがとう。行ってくるね」 「……はい!」  階段を降りていく燕さんの背中を見送って、ボクは手元のフリージアを視線を落とす。黄色くて、不思議と元気になれそうな、可愛らしい花。ボクの中の寂しさとか切なさとかも、溶かしてくれそうだった。  ……大丈夫。ボクなら、大丈夫だ。たしかに、少し胸が痛んだけど……それ以上に、幸せな気持ちも感じているから。  大好きな人達が、幸せになれる未来……ボクと旭が願っていた未来が、やっと訪れようとしてるんだ。 「……幸せになってくださいね」  潮風に吹かれながら、ボクは2人の後ろ姿に向かって、穏やかに微笑んだ。  
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