side 桃井 花織

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「そんなこと言うなら、食べなくていいです!」 「うそうそ、いただきま~す」  先輩はその手を避けて、チョコを一口齧った。ゴリッと岩を砕いたような音がした。 「ど、どうですか?」 「苦い」 「じゃあ、食べなくていいです!」 「いや、これはこれで美味しいよ? ハイビターな焼きチョコだと思えば」 「何ですか、それ。揶揄ってますよね!? もう!」  本当に、惚れ薬が入ってたら良かったのに。  そんな風に考えてしまう自分に苦笑した。  泉先輩は、自分が嫌い。だから、そんな自分のことを好きだと言う相手のことが理解出来ない。  だからきっと、山本先輩なんだろう。絶対に、自分に振り向いたりしないから。 『ちゃんとした告白はしないの?』  もし、あたしが先輩のことを好きだと言ったら、先輩はきっと、あたしの前から居なくなる。  好きだと言ったら、この恋は終わる。  だから――。 「泉先輩なんて、大嫌い」       (了)
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