3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「そんなこと言うなら、食べなくていいです!」
「うそうそ、いただきま~す」
先輩はその手を避けて、チョコを一口齧った。ゴリッと岩を砕いたような音がした。
「ど、どうですか?」
「苦い」
「じゃあ、食べなくていいです!」
「いや、これはこれで美味しいよ? ハイビターな焼きチョコだと思えば」
「何ですか、それ。揶揄ってますよね!? もう!」
本当に、惚れ薬が入ってたら良かったのに。
そんな風に考えてしまう自分に苦笑した。
泉先輩は、自分が嫌い。だから、そんな自分のことを好きだと言う相手のことが理解出来ない。
だからきっと、山本先輩なんだろう。絶対に、自分に振り向いたりしないから。
『ちゃんとした告白はしないの?』
もし、あたしが先輩のことを好きだと言ったら、先輩はきっと、あたしの前から居なくなる。
好きだと言ったら、この恋は終わる。
だから――。
「泉先輩なんて、大嫌い」
(了)
最初のコメントを投稿しよう!