side 泉 涼

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「見てたんですか?」 「見てたっていうか、聞こえたっていうか」 「盗み聞きじゃないですか」 「心外だなぁ。故意じゃなくて、偶然だし?」 「あれ? (りょう)?」  まさかの浩太が、続いてひょっこりと顔を出した。花織ちゃんの肩が跳ねる。  ……マジか、コイツ。普通、気まずくてもう少し時間置くか、反対側から戻るかするだろ。  と思ったけど、浩太は人一倍鈍いんだった。おそらくというか確実に花織ちゃんの〝義理〟という言葉を信じて疑いもしていないんだろう。呑気に声を掛けてくる。 「どうしたんだよ、こんな所で」 「んー、ちょっとね。用事があって。それより仁奈(にな)ちゃんが浩太のこと探してたよ?」 「えっ!? 山本(やまもと)さんが!?」  俺の言を受けて、浩太がパッと顔を輝かせた。途端にソワソワし出す。本当、分かりやすい奴。 「早く行ってあげなよ。まだ校舎内に居ると思うよー?」 「分かった! ありがと、涼! あ、桃井(ももい)さんも、また!」
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