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慌ただしく暇を告げて、浩太が駆け去っていく。後に残された俺と花織ちゃんは、暫しの間どちらも無言でいた。見えなくなるまで好きな人の背中を目で追っていた花織ちゃんは、今どんな気持ちでいるだろう。
項垂れた後頭部に、茜色の夕陽が差す。それが異様に淋し気で、胸を打った。
「またフラれちゃったねー、花織ちゃん」
軽口で、沈黙を破る。
「可哀想に。俺が慰めてあげようか?」
「要りません」
ぴしゃりとした返答。棘のある口調。俺の方は一切見ない。
「にしても、〝義理〟ねぇ……。ちゃんとした告白はしないの? アイツ、鈍いからストレートにいかないと全く伝わらないよ? そうやって、アピール玉砕するの何回目?」
「そんなの……絶対にフラれるって分かってるのに、する訳ないじゃないですか」
「あーね、あの二人の間に割り込む余地なんて無いよねぇ。仁奈ちゃんは本物だよ。俺がちょっかい掛けても、一切靡かなかったもん」
「そんなこと……分かってますよ」
分かっている。それでも、やめられないんだろう。
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