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風が吹いた。二月の風は、春が近いとは考えられない程に寒い。
「ところで、仁奈ちゃんのチョコレート意地悪して隠したのは、だぁれ? 俺が廊下のゴミ箱から見つけ出したら、あの子『これじゃあ、もう遠野くんに渡せない』って泣いてたよ?」
「あたしじゃないです。……今回は」
「ふぅん、新手か。浩太の奴モテるからなぁ」
「……それで、山本先輩はどうしたんですか? 泉先輩、あの人のこと好きなんでしょう? それこそ慰める絶好のチャンスだったじゃないですか」
虚を衝かれた。花織ちゃんは、俺が仁奈ちゃんのことを好きだと思い込んでいる。大事な親友の恋人候補が簡単に他の男に靡いたりしないか、試してただけだったんだけど。
「汚れてたのは外側だけだから、購買で買ってきた新しい包装紙でラッピングし直してあげたよ。あの子が今、浩太のことを探してるのは本当」
「それで、遠野先輩を呼びに?」
「まさか。俺はそこまでお人好しじゃないよ。通り掛かったのは本当に偶然」
「だけど、背中を押したんでしょ? 信じらんない。悔しくないんですか?」
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