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「別に? 俺は仁奈ちゃんのことも浩太のことも好きだから、二人が幸せならそれでいいよ」
間があった。花織ちゃんを見ると、目が合う。大きな薄茶の瞳には、憐れみの色が浮かんでいた。
「泉先輩は、それで幸せなんですか?」
「うん」
花織ちゃんが大仰に溜息を吐いた。渡せなかったチョコレートを持ち上げて、唇を尖らせる。
「あーあ、チョコレート、徹夜で作ったのになぁ」
「手作りなんだ? それじゃあ、俺が貰ってあげよっか? 折角だし」
「嫌ですよ。何で泉先輩なんかに」
「あはは、だよねぇ」
「大体、先輩めちゃくちゃ貰ってるじゃないですか。何ですか、その紙袋の束」
俺の片手を埋めるそれを、彼女が指差す。中身は言わずもがな、大量のバレンタインチョコだ。
「あー、これ? 困るよねぇ、毎年。どうせ捨てちゃうのに」
「捨てちゃうんですか!?」
「そりゃねー。何が入ってるかも分からないのに、食べられる訳じゃないじゃん? でも、捨てたの見つかって泣かれるのも面倒だから、わざわざ直接ゴミ集積所まで持っていくところだったんだよね」
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