side 桃井 花織

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「またフラれちゃったねー、花織ちゃん。可哀想に。俺が慰めてあげようか?」 「要りません」  放課後、遠野先輩に敢え無く玉砕したあたしを、泉先輩がいつものように揶揄ってくる。 「にしても、〝義理〟ねぇ……。ちゃんとした告白はしないの? アイツ、鈍いからストレートにいかないと全く伝わらないよ?」  鈍いのは、どっちですか。 「そんなこと……分かってますよ」  分かってる。本当は、とっくに。あの二人の間に、入り込む余地なんてないこと。気付いてて、負けを認めてた。  それでも、遠野先輩にアタックし続けるのは……泉先輩の気が引きたいから。  泉先輩は、あたしがフラれて落ち込む度に話を聞いてくれた。茶化したり揶揄ったりするけど、いつも何だかんだで励ましてくれた。  その内に、分かった。泉先輩はチャラそうに見えて、誰も寄せ付けないってこと。  笑顔で壁を作って、誰にも深くは踏み込ませない。――潔癖な人。  その仮面の下が気になって仕方なくて、気が付いたら目で追うようになっていた。  好きになったのは、いつからだろう。  風が吹く。二月の風は、春が近いとは考えられない程に寒くて、人恋しさが募る。
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