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side 泉 涼
君が好き。頑張り屋さんで、いつも一所懸命で……だけど報われない。可哀想で可愛い、君が好き。
「ごめん。チョコは好きな子のしか受け取らないって決めてるんだ」
花織ちゃんが、またフラれている。
「でも……義理ですよ? いつもお世話になってるお礼ってだけですし、変な意味なんてないですし……それなら」
「それでも、受け取れない。ごめんね」
彼女の必死な嘘も、奴には通じない。頑なな程、実直。それが俺の親友、遠野 浩太だった。
通り掛かった裏庭から聞こえてきた友人同士のやり取り。足を止めずにはいられなかった。
「そうですよね……あたしこそ、困らせてごめんなさいっ! じゃあ」
校舎の角から、花織ちゃんが飛び出してきた。今しがたの明るい声音とは真逆に、泣き出しそうな表情。薄い茶色の大きな目が、俺の姿を認めて更に真ん丸に見開かれた。
「泉先輩っ!?」
俺はとりあえず、空いている方の手を振って笑顔で「やぁ」なんてお気楽に応えてみせた。花織ちゃんは怪訝そうに眉を顰める。
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