序章

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 桜の花弁(はなびら)に抱かれながら赤子は小さく声をあげた。その声は誰にも届かない。  ーー額に小さな突起のある赤子。人間より産まれし呪われた()()  ーー(さく)の日、血に狂い、一族の血を啜るように呪詛をかけられた憐れな(おに)。  置き去りにされた()()は死を待つばかりだった。力尽きるまで母を探し泣き声をあげる事しか出来ない。ひと思いに息の根を止める慈悲すら与えられなかった()()の悲しい末路。  他者からの呪いを一身に受け、産まれ出でた鬼の宿命(さだめ)なのだ。
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