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「弥七じいさま、おいらと紅姫は変わりなく元気だ。」
桜太は大樹の根元に腰を下ろし、風化し歪に崩れた髑髏に手を合わせる。肉があった時は揃っていたであろう骨は獣に食い荒らされ四散している。髑髏だけはどういうわけか樹の根の隙間にはまり込み、紅姫と桜太を見上げるようにあった。
どうしてそうなったかは桜太には分からない。ここで命を落とし果てるに任せた結果がこうなのだろう。
桜太達は墓参りが終わると、いつも通り道すがら木の実や山菜を採りながら家路につく。
紅姫は決まって朔の夜の前に、桜太に綺麗な景色を見せ、暗闇に耐えられるように遠い道のりを歩かせようと弥七に会いに行く。それで気が楽になるならと紅姫は考えていた。
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