地獄行きメーター

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 ここからの行動は計算済みだった。いくらメーターが0でも、実際の行動と違いがあれば怪しまれてしまう。閻魔庁までの道中、テツオは品行方正な男を演じた。つまずく老人がいれば駆け寄って抱き起こした。心の中では、面倒臭ぇジジイめと思っていた。賽の河原(さい かわら)で積み上げた石を鬼に崩され泣いている子供がいれば、慰めの言葉をかけて励ました。心の中では、うるせぇガキだと思っていた。三途の川で溺れそうになっている者がいれば腕を掴み岸まで引っ張った。心の中では、鈍臭いマヌケな奴めと思っていた。何故、三途の川にかかる橋の上を歩けないのかは謎だったが、テツオは深く考える暇もないほど、良い人を演じるのに必死だった。助けられた者は皆、テツオを仏のように有難がった。善人のフリをしたテツオは、無事閻魔庁までたどり着いた。    
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