地獄行きメーター

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「えぇ、存じてますよ。え〜っと」    鬼はペラペラと資料をめくる。   「無敵のテツオ。地獄を恐れない男ですよね?それなら大丈夫ですね!安心しました。こちらの方のご案内をお願いしま〜す!」    自慢の異名にピッタリの場面が来るなんて、テツオは思ってもみなかった。   「刑期は349京2413兆4400億年となっております。頑張ってくださ〜い」    笑顔で手を振る窓口の鬼から引き剥がされ、代わりに屈強な鬼達に両脇を抱えられる。テツオは暴れる事も許されず『地獄はこちら』と書かれた門の中へ連れて行かれた。   「あの方、ここに来るまでの道中でたくさんの方を助けたんですよ。もう更生されたんじゃないですか?」    一部始終を見ていた近くの男が言った。   「あれだけの悪事を働いておいて、きちんと更生できるような清く強い心をお持ちの方は、最初から罪など犯しません。まぁ、更生したフリはいくらでもできますけどね」   「良い人のフリだったとは…。確かにあの人、三途の川を泳いで渡ってました。良い人なら橋の上を歩いて渡れるはずなのに、おかしいなとは思ったんです」   「この世界で嘘は通用しません。それに、場所が変わろうが時が経とうが、人の本質なんて変わらないものですよ。あの方の言動の端々に、それが表れていました。人間は複雑そうに見えて単純なもの。閻魔様どころか、我々下っ端の鬼を騙す事さえ不可能です」          地獄行きメーター。そんな物が無くて良かったと安心しているあなた。実は見えていないだけで、あなたのメーターも閻魔庁によって管理されているかもしれません。閻魔様の本来の姿であるお地蔵様が、今日も街のあちこちであなたを見ていらっしゃいます…
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