地獄行きメーター

1/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 様々な分野において多くの技術が進歩し、人間達の生活は豊かに、そして楽になった。しかし時代は進んでも全く向上しないものがある。それは人間のモラルだ。社会における貧富の差が激しくなるにつれ、妬みやひがみ、憎悪が溢れ、そこから生み出される言動によって相手を傷付る事が常となっていた。犯罪やいじめは増え続け、優しく善良な人間は減り続けた。      そんな荒れた人間世界のとばっちりを受けている場所があった。閻魔庁だ。死後、人間はここで生前の罪を裁かれるのだが、犯罪が増え、妬みなどの悪き心を持った者が増えた結果、地獄行きとなる者が増加し、鬼達は忙殺され疲れ果てていた。閻魔も同様、裁かなければならない罪人が増え、休む暇無く業務を行っても、常に長蛇の列が出来ていた。      鬼達の健康を守る為、そして業務を効率化する為、閻魔は禁断の手を使う事にした。人間界と直接関わる事にしたのだ。閻魔庁の技術を結集し、やがて『地獄行きメーター』なる装置が完成した。スマホに似ているその装置の画面には車のスピードメーターのようなものが映し出され、0から10までの数字が付いている。犯罪やいじめはもちろん、悪意のある言動などを行うとメーターが上がり、上限に達すると地獄行きが決定する。反対に、善良な行いをするとメーターは下がる。全ての人間達はこの装置を持つ事が義務付けられ、メーターが上がらないよう日々の行いに気を配るようになった。自分が地獄にどれだけ近いかをメーターで可視化する事で、モラルを保つようになったのだ。この取り組みは成功した。地獄行きを免れる為に悪事を働く者が減り、鬼達は余裕を持って業務を行う事ができ、またメーターのおかげで極楽行きか地獄行きかを判断するのも随分楽になった。    
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!