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#2.酒場の使用人
この世界が魔法を便利な道具として扱う様になってから80年以上が過ぎると...
人はあれこれと考え笑っては、いつの間にか過去の事など...
余り見ることの無い太い歴史書として図書館に仕舞うものである"
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「おーい? 誰も居ないのか?」
朝早く、酒場ボルカから酒を頼んでいた客たちから集金する為にそのボルカから少し離れた町レパタにまでやって来ていたセシリアは、その客である1人の家の前に立っていた。
「..はぁー、呼び鈴も付けてないのかよ...貧乏人め...
おーい! 早く出て来いよ!
こっちは集金で来てんの! ..ねぇーってば!
..本当に居ないのか? ...もぉー! あとでまた..」
セシリアは、叫ぶだけ叫んで、その客の集金をあと回しにしようとした時、家の扉が開いた。
「...何だ? 大声で叫んでよ..さっきから」
「居るのかよ? ..じゃあ返事くらいしろよ!?」
「..悪いな、寝てたよ?」
「もう11時前だぞ?」
「そんなもん関係あるか...俺の起きたい時に起きる」
「..ああ分かったよ。酒の集金だ。金を払ってくれ?」
「..ちょっと待っとけ...金を持ってくる」
漸く出て来た客に酒代を請求したセシリアは、手元に持った料金表からその客の請求書を探す。
「...で、幾らだ?」
「..えー、あんたは...全部で10本の..85ギルドだ?」
「はぁ? ..何を言ってやがる。あのじいさんは、1本サービスだって言ってやがったぞ!」
「知るかよ? そんな事...さあ早く、10本分の85ギルド..払え?」
「..ったく、あのクソじじい! いい加減な事を言いやがって!」
「そうそう? あのクソじじいは、もう歳で問題があるんだよ? ..気をつけるんだな?」
「..二度と頼まん! そんな安酒...」
「そうしろ? 身体に毒だぜ? うちの安酒はさ?」
客は、納得出来ないままセシリアに85ギルドを投げ渡し、家に戻ろうと背を向ける。が、直ぐに踵を返しセシリアの片手を掴んだ。
「おい? お前、ちょっと寄ってけよ? こっちはイライラしてんだよ..なあ? 少しでいいから..」
セシリアは、その自分の片手を掴む相手の手に、
もう片方の手を添えてから相手の目を見、言葉を乗せる。
「図に乗るな?」
その冷ややかな目と言葉を見た相手は、掴む手から自然と力が抜けて距離を置いた。
「..クソったれが! さっさと帰れ!」
その声に背を向け立ち去ろうとするセシリアに、その男は、まだ収まらない声を上げる。
「次に金が出来た時は、てめぇ覚悟しとけよ! 今度は噛み付いてやるからな!」
品のない声等、彼女には届かなかった。もうその声には飽き飽きしていたのだから。それに毎日毎晩、下品な声に囲まれ生きて来たセシリアには、どうでもいい響きだった。ただ声は届かなくとも、その声を相手にしなければならない生活には何度も涙が出そうになった。
「..反吐が出るよ? てめぇらの存在には...」
その度にセシリアは、それを誤魔化そうと同じように汚い単語を混ぜてそれを吐く。
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