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香
…?
色んな人から匂いがする…
昨日までは、こんなにたくさん匂い、しなかったよ?
お友だちのみおちゃんは、少し甘くて、ほんの少し酸っぱい匂いがする。
意地悪なみきちゃんは、少し苦くて、辛い。
なんの、匂いなんだろう?
「ねぇ、みおちゃん。おうちのシャンプー変えたの?」
「ううん、変えてないよ。」
どうしてかな?
そういえば、お母さんも匂いがしてた。
いつも優しいお母さん。お母さんはみおちゃんよりもちょっぴり甘くて、けっこうすっぱいの。
妹のりおちゃんは、匂いがしなかった。りおちゃんは生まれたばっかりで、まだお話できないの。
どういう、ことなのかな?
お母さんとか、友達にはあんまり話さないほうがいい気がする。
そうしてその日は、たくさんの匂いに包まれて、誰にも話さずに眠りました。
―☆―
…あれ?ここ、どこ?
――目を覚ましましたか、香織。
この人だれだろう。ぴらぴらの布が被ってて、お顔が見えないよ。
――ここはあなたの夢の中。今日一日、なにか不思議なことはありませんでし たか?
不思議なこと…この人にならお話しても、いい気がする。
「たくさんの人からいろんな匂いがしました。昨日まで、なんともなかったのに…」
目の前の不思議な人は、私ににっこり笑いかけて言った。
――ええ。あなたは、香織、ですもんね。
…?何を言っているんだろう。
――あなたも知っているでしょう?自分の親が人間ではないと。
どうしてこの人が知っているの?私とお母さんだけのひみつなのに。誰にも、お話したことないのに。
――詳しい話はまた今度。人ではないと聞いていても、種族は聞いていないでしょう?
しゅぞく?なんだろう、それ。
――あなたは吸血鬼。人の血を吸って生きる種族です。そして、今日その力が再び目覚めたのです。遠い昔には、皆、能力を持っていましたが、今となっては力は退化してしまっています。能力を取り戻せるほどの強い体を持つものが、今ではあなたしかいません。
難しくてよくわかんないけど、すごい力がもらえたみたい。
――あなたのその力は、相手の感情や性格、あなたへの思いなどによって感じる香りが変わる、というものです。
「じゃあ、例えば甘い香りは?」
――甘い香りは、いい人の印です。その香りが強いほど、善良な人間なんですよ。酸っぱいのは、恋をしてる証拠。苦い人は意地悪で、辛い人は怒りっぽい人です。
みおちゃん、恋してるんだ。誰かな?
――…もし、血を飲みたくなって我慢できなくなってしまったら、お母さんに言うといいですよ。あの子は信用できますからね。それでは…
「待って!」
――どうなされましたか?
「あなたは誰なの?お名前だけでも、教えて。」
――いいでしょう。私の名は哀来。正体は…いつかわかるでしょう。
「えっへへ。ありがとう‼また会おうね。」
その瞬間、目の前が真っ白になっていつの間にか自分の部屋にいた。
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