出会

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出会

あれから時が経ち、小学六年生になった。 力のことを知ったときから、人には一度もそのことを話したことがない。お母さんにすら話すことができないでいる。 名前は鬼里 香織(きざと かおり)。地味で目立たない、普通の人とは違う普通の人だ。種族や力以外は何も変わらない。 自分から目立たなくしているというのもある。あの時よりも力が強まり、その人の考えていることなど、やんわりわかるようになってしまった。 そのせいで、友達の暗い部分などが見えてしまい、怖くなってしまうのだ。 そんなある日のことだった。 いつもどおりなるべく日差しを避け、遅刻をしていたときのことだった。 どこからかふわっと甘い香りが漂ってきた。近くにパン屋さんでもあるのかと思いながらも、匂いにつられて通学路を抜けてしまった。 止まろうとしても、足は止まらない。 行き着いた場所は、前髪で顔が隠れた地味な男の子だった。 どうしてか、どんな事を考えているのかはよくわからなかった。 でも、あまりにも甘くていい香りが漂っている。だから、根っからいい人なんだ、ということははっきりわかった。 混じりっけのない甘い香り。私は思わず立ち止まってその人の足元を見つめていた。 顔を見るのは、恥ずかしいからだ。 「…あの、どうした…の?学校、行かないの?」 声を聞いた瞬間心臓がどきりと跳ね上がった。 私、どうしちゃったの?初めてこんなに善良な人を見つけたから混乱してるのかな? 「えっと、あの…今日は…いい天気ですね。」 気づいたらよくわからないことを口走っていた。 でも彼は優しく微笑んで答えてくれた。 「そうだね。でも、僕はあまりお日様が好きではないな。」 「どうして…ですか?」 自分と同じところを見つけ、迂闊にも少し喜んでしまった。 吸血鬼が地球で暮らすために進化したので、日光を浴びても灰になったりはしない。でもやはり太陽は嫌いなものだ。 「僕と正反対の存在だから。あんなに明るい存在に離れないよ。」 「そんなこと…!」 思わず言い返しそうになってしまったけど、いきなり知らない人に否定されても驚くだけだと思い、ギリギリで止めた。 しかし彼はありがとう、といい微笑んでくれた。 それだけでまた心臓がドクンと跳ね上がった。 そして、この人の血を吸いたいと思ってしまった。
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