第十三章…真実

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言葉が出ない。ただ結ちゃんを抱きしめて胸が詰まる。 大事な人とこれから生まれる大事な人、どちらか片方しか選べないなら結ちゃんの予想通り僕は結ちゃんを選ぶだろう。 その選択が彼女を苦しめて悩ませ追い込んで、無意識に『結』を出現させた。 結ちゃんを抱きしめながら僕は小さく謝り、頭の中で考えていた事の答えを導き出そうと結ちゃんに聞いた。 「若い結が来た頃、結ちゃんがお休みをもらった時期だけど、そこから一ヶ月、体が辛かったんじゃない?その頃より今はどう?」 「………お休みの頃?ああ、うん。悪阻がひどくなった頃かな。帰ったらすぐ横になりたくて書斎に籠った時期だね。実家に帰ったのも寝たかったし食事作るのもきつかったから、正直、実家が楽だった。一ヶ月経って少し悪阻も落ち着いたし、すぐ横になりたいっていうのは減ったかな。楽になったと思うけど…どうかした?」 考え込んだ様な僕の声に結ちゃんが不思議そうに聞いて来る。 僕は隠す事なく答えた。 「若い結は結ちゃんの一部、最近、いろいろ調べてね。心の問題なのか脳の問題なのか、現象の解明は不可能だけど、心や気持ちの一部を切り取ってもう一人自分を形として具現化した場合、本体の結ちゃんの体力や精神が元気でいられると思えない。普通で考えてもそうでしょう?僕が病気で苦しんでいて赤ちゃんで大変だった結ちゃんを追い込んだんだ。」       [ ○→結ちゃんが一番大事          ◎→大事な結ちゃん追い込んだのは僕      ] 結局僕は、一番大事な人の具合の悪さにも気付かず、気付いていても何もしなかった。 大丈夫の言葉を信じて、一番大事だから、それを理解している人を追い込んだ。 追い込んでもう一人の『結』までも出現させ、結ちゃんの体力を奪った張本人になる。 「…………僕の愛情が、結ちゃんを苦しませ『結』を哀しませた。僕は…結ちゃんから離れた方がいい?僕は結ちゃんから……離れたくない。結ちゃんがいなくなった未来なんか想像したくない。結ちゃんが望む言葉は言えそうにない。だって……これ以上、君を失う事は考えられない、これ以上、君をどう好きになればいい?」 気が付けば涙が溢れていた。 結ちゃんに頭を抱きしめられて、ただ泣いていた。 『結』は悲しそうに一人で消えた。 それも僕の所為で病気の結ちゃんに余計な負担をかけたのも僕。 一番大事な人を苦しめたのは僕だった。
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