第一章…仲良し夫婦

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第一章…仲良し夫婦

「僕」はしがない文具メーカーの営業マンだ。 スマホ、タブレット、スマート家電が溢れる世の中で文具はかなり売り込みの難しい商品になっていたがそれでも当たれば市場は大きい。 最近は可愛い文具や変わった文具が売れていて、うちの会社も新商品開発に力を入れている。 しかし僕が現在担当として売り込んでいるのはホワイトボード。 企画開発なんて部署に僕が配属される訳もなく、新しい発想なんて僕にはない。 今の時代塾でもタブレット導入、学校でも導入でホワイトボードの人気はない。 プロジェクターを買う余裕と使う自信がないという年輩の社会の先輩に頭を下げて買って戴く日々だ。 隙間産業とでも言うのか、会議でプロジェクターを使う、タブレットを使うから必要ないと断られる事も多いが、不思議と直ぐにその場で書けるという利点もあって一台あっても良いね、高級品でもないしと買ってくれる会社もある。 そんな会社を探すのが最近の僕の仕事。 正直に言えばどっちかと言えば人生の負け組。 大学も三流なら会社も三流、そんな事は重々分かってる。 だけど沢山の人の中、上には上がいるし下には下がいる。 平凡でも安定していて落ち着いた生活がいい、何よりも僕の妻は僕よりずっと安定とか落ち着いたとかそういうのが好きな人だ。 暢気でおっとりでニコニコで少しドジで明るくて、そんな妻をずっと笑顔で居させる事が僕の役目で仕事はそこそこでいい、沢山お金は欲しいけどそれで妻の側にいる時間が減るならそこそこでいい。 僕はそれ位妻が好きで大事だ。 妻もいつもそう言ってくれる。 僕たちは誰が見ても仲良し夫婦だった。
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