第十一章…ばいばい

1/5
837人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ

第十一章…ばいばい

「あなたが思うほど結さんは素敵な女性ではないかもしれない。万が一あなたが亡くなって数日後、新しい男性をあなたの墓前に紹介してもあなたは結さんが素敵な女性だと言えますか?それでも結さんが好きですか?」 「なんで…君がそんな事を聞く?何を言われても聞いても結ちゃんへの気持ちは変わらない。」 他人事みたいな話し方、最初の頃に聞いた声、笑顔で結ちゃんを悪く言う結に僕は毅然と答える。 「事実を言っています。もしの話ですがあなたが突然亡くなった後で新しい男性と再婚されたら、あなたが生きていた時からお付き合いしていたという事になりますよね?そんな女性が素敵ですか?」 自分が死んだ時なんて考えた事もなかったので、少し戸惑ってから想像し、今の結相手に適当な答えは言えないとしっかりと考えて冷静に答える。 「………周りは、そう思うと思う。でも…僕は結ちゃんを信じてる。結ちゃんが墓前とはいえ僕の前でそう言うなら信じるよ。きっと辛い時に出逢って支えてもらったいい人なんだ。そんな人に出逢えて良かった。」 「バカですか?どう考えてもおかしいでしょ?そんな偶然ない。みんなそう思って色々言いますよ。」 「そうだね。だったら…周りが言うなら尚更、僕だけは結ちゃんを信じて味方でいたい。結ちゃんは嘘を言える子じゃないんだ。」 「いえますよ!私が言っているのだから言えます!私も結なんだから、結は嘘位簡単に、「分かってる!!」 大きな声で反論する(かのじょ)の声を消す大きさで声を上げた。 「君が結ちゃんだって分かってる。さっきも言っただろ!僕との時間がない。僕と結ちゃんは…君の知らない時間を共有して過ごして来た。泣いたり怒ったり笑ったり苦労したり、もっと大変な経験をしてる夫婦から見ればおままごとみたいな結婚生活かもしれないけど、僕達也に大変な事も二人で乗り越えて来た。君も確かに結ちゃんだけどその時間は君には理解出来ない。僕は誰が何を言っても結ちゃんを信じる。結ちゃんの事は今も好きだし大事だ。でもそれは年齢じゃなくて結ちゃんだから。結が今の結ちゃんに続いているから繋がっているから結も大事だって思える。結、前から何となく考えてて聞こうと思ってたんだ。どうして結はも嫌いにさせたがってるの?」 『結』が結ちゃんの悪口を言うたびに違和感を感じていて、喉に引っ掛かっていた小骨の原因に僕はやっとで気付き、ずっと疑問だった言葉を口にすると、少し驚いた顔をした結が天を仰いだ。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!