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「若い結の事は良く分からないけど……あきさんは悪くないよ。だって…私もあきさんを一番大事で一番大好きでこれ以上……えっと……愛せないからね?きっと若い結も同じ気持ちだよ。だって私なんでしょ?あきさんの所為なんて思ってないし幸せになって欲しいだけ。逆の立場ならあきさんの命を優先してと私も言ったかもしれない。それが分かるから言えなかった。ごめんなさい。でもね?私はあきさんが説得しても産むから。」
頭を抱きしめられたまま言われて、その腕を掴み、ゆっくりと頭から外して結ちゃんに向き合う。
「説得されたら心が揺らぐって…言ってたよね?」
「…う、うん。」
不安そうな結ちゃんに泣き笑いの顔を向ける。
「それは僕も同じ。こんなに痩せて……でも可愛い結ちゃんにずっと説得されていたら僕の気持ちも揺れるよ。お医者さんと話したい。結ちゃんを信じてる。赤ちゃん産まれてから治療して、結ちゃんは元気になる。治療の間は赤ちゃんは僕が面倒見るし家事もする。無理な時はお母さんに助けを求めて、うちの親にも事情を話して応援に来てもらえる時は来てもらう。それで結ちゃんは僕の側にいてくれる?」
「……側にいる為に頑張ってたのよ。赤ちゃん、産んでもいい?」
今度は結ちゃんが泣き出して、僕の頬に震える手で触れた。
「うん…産んで欲しい。」
「もしもの時はお母さんに…「ううん。そんな事、考えないで。でも結ちゃんが僕の未来を考えるなら子供との未来を奪わないで欲しいな。結ちゃんの子を愛しながら結ちゃんの話をしながら子供と生きて行く。だけどそれはないと思うよ、僕は…僕達は三人で生きて行く。」
「……うん、あきさん、ごめんね。不安にさせて心配かけて。許してくれてありがとう。」
そう言うと結ちゃんは僕の胸に顔を埋めて、子供みたいに泣き出した。
今まで一人で考えて不安だった分、安心したのだと思う。
「結ちゃんは悪くない。気付かないで追い詰めた僕が悪い。僕は…結ちゃんと赤ちゃん、どちらかを選ぶ必要があるなら結ちゃんを選ぶと思う。だけど結ちゃんを苦しめてまで結ちゃんを選んでも笑ってくれないと意味がないから。結ちゃんを好きだから結ちゃんの気持ちを優先する。僕だって…赤ちゃんは嬉しいし会いたいよ。会いたいに決まってる。」
その言葉で余計に結ちゃんを泣かせてしまった。
優しい嘘、結ちゃんが隠していたのは僕の幸せと可愛い未来の子の幸せを考えての優しい隠し事だった。
この日から僕は真実に向き合うべく、現実へと戻った。
結ちゃんの病気への知識と理解、お腹の子の無事出産、目標は先ずはそこ。
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