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二階に上がれば、先程よりも濃い陰の気配を感じるようになった。少なくとも一階よりは危険そうな雰囲気だ。薄暗くてよく見えないが、左右に広がる廊下が、壁の突き当りでどちらも先に向かって角になって曲がっているのが見えた。当然、その角の先には重い暗闇が広がっている。
「……魔物が出るかも知れねーな」
「だろうね」
階段を登りきり、真っ先に様子をうかがっていたクーフの隣で俺が呟くと、男は落ち着いた様子でそれを肯定する。
「しかし、魔物の出処って感じではなさそうだがな」
「今のところはね」
「で、この階でも龍について調べるの?」
俺達の会話に、後ろからミローナさんが割り込む。クーフは静かに頷いていた。
「情報があれば、多い方がいいですから」
「じゃ、ちょいと手間だが、くまなく探すか」
そう言って、暗がりにライトの魔法を飛ばしたときだ。黒い壁に張り付くようにうごめく影に気づき、俺はとっさに構えた。
「魔物か⁉」
「来る!」
クーフの言葉の直後だった。暗がりから、氷で作られた人形のようなものが跳び出してきた。氷鬼だ。子供のような小さい体で動きが素早く、その名の通り氷の身体でこちらに攻撃を仕掛けてくる。魔物が跳びかかってくると、それをひらりとクーフはかわし、その体に手刀を振り下ろす。鈍い音がして、魔物が体制を崩すが、そこまでのダメージではないようだ。なんてったって体が硬いからな。
「ここは俺に任せろ!」
俺は体制を崩した魔物に剣を振り上げた。
「炎の精霊……頼むぜ!」
短い召喚でも十分な熱量が俺の剣に宿る。振り上げながら熱くなるその剣に切り裂かれ、氷鬼の体は真っ二つになって、床に水のようになって溶け落ちた。
「さすがジュータ。炎の使い手なら、余裕だね」
俺の攻撃を見て、クーフがニコリとする。それに返すように、俺が腕を振り上げヤツに拳を見せれば、男も気づいたように俺の拳に拳を当ててきた。
「よし、これも分かるようになってきたな」
「お陰様で」
「二人共強いわね! 感心しちゃった」
と、後ろで戦う様子を見守っていたミローナさんが嬉しそうに微笑む。……その笑顔だけで俺は癒やされます!
「さてと……こちらの道を行ってみようか」
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