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クーフは魔物が出てきた道を迷いなく突き進んでいく。道中心配していたのは途中出てくる魔物だったが、正直クーフが魔物の注意を引き、隙を作ってくれれば、俺の剣で倒すのは余裕だった。クーフのヤツ、俺が指示しなくてもそれを分かって動いてくる。こういうところを見ると、やっぱり戦い慣れているんだなと感心してしまう。
また程なくして、一つの龍の像にぶち当たった。今度の龍は一つの台座に二体くっつくように作られた像だった。あの蛇のような龍と、四枚羽の龍だ。
「……『神に仕える龍、光もたらすもの、雨もたらすものとあり』……ですって」
龍の台座の文字を素早くミローナさんが読む。
「……神に使える龍……か。正直、今回ズスタに現れたのは、こっちのいい方の龍じゃねえからな。……正直もう片方の龍の情報が欲しいよな……」
思わずそんなことを呟く俺に、クーフはあごを押さえ小さく答えた。
「……そうでもないよ……。相反する力を知ることで、対策が見えることもある。光の力を持つ龍……雨の力を持つ龍……か……」
何か考え込むような様子の男に、俺は意味がわからず龍の像を見上げていた。決してでかすぎる像ではないが、長身の俺が見上げるほどの高さはある。石で作られた像は所々かけていて、それが経った時間の長さを教えてくれる。
ふと、隣の男が息を飲んだ。
「……塔のこの位置……もしかして、通路の反対側に、邪龍の方の像があるかも」
その言葉に、階段を上がってきた時の道が脳裏に浮かんだ。確かにあの道は左右どちらにも同じように続いていた。その右側を歩いてきたから、その逆側ってことか。
「引き返すか?」
「この先に何もなければ」
と、クーフが道の先に一人で歩いていってしまう。その様子に、ミローナさんが心配そうに声をかける。
「あ、一人で大丈夫、クーフくん?」
「単独行動は一応控えとけよ、何かあったら……」
「あ」
言っている側から、クーフのそんな反応が聞こえ、俺は思わず心配してヤツが向かった通路先に走り寄る。
「大丈夫か!」
と、声をかければ――クーフのヤツ、デカイぶよぶよした魔物目の前にしゃがみこんでいた。
「きゃー! く、クーフくん⁉」
後からやってきたミローナさんが思わず悲鳴を上げるが、
「あ、大丈夫です。この子はおとなしい方の魔物なので」
と、当の本人は落ち着いた反応だ。
「……やっぱりな……」
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