二種類の龍

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 その言葉に、改めて俺は龍の像を見た。二体の龍が絡み合うように作られた像は、石だというのに禍々しさがあった。あの大きな二つの翼に鋭い爪の生えた四肢、大きく開かれた口には無数の牙が生えている。体を覆う鱗が妙に気味悪い模様を描いているが、それはあの本物の龍によく似ていた。もう一体の方はもう少し身体は細長いが、同じように不気味に大口を開けていて、身体は光沢があるように見える。とはいえこちらの龍には勿論見覚えはない。  俺達が龍の像に釘付けになっている間にも、ミローナさんは龍の像の足元にある文字を解読していた。 「えっと……『破壊をもたらすもの、災いを招く……炎をもたらすもの、破滅を招く』……ですって。どっちがどっちなのかわからないけど、禍々しい龍ね……」  金髪をかきあげながら、ミローナさんが龍の像を見上げている。初めて見るミローナさんがそう感じるほど、不気味な龍は随分と本物のように作られていた。こうして龍について詳しく姿を残している塔だ。ここに来て、クーフが詳しく調べようと言っていた理由が腑に落ちる。 「……確かにな……。この塔には龍にヒントがありそうだな……」  俺の言葉に、帽子の男は無言で頷いていた。  
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