暗い顔

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暗い顔

 しばらく二階を散策していたが、それ以上の情報も像も見当たらず、俺達は次の階段を見つけて三階へと上がった。また階が上がれば、一層冷気と陰の気が強くなる。皮膚に伝わるその二つの気に俺は思わず身震いした。 「……おかしいな……。なんで階が上がる度に陰の気が強くなるんだ?」  俺の疑問に、今しがた階段を上がってきたばかりの背後の美女も訝しげだ。 「確かにそうね。それに、上に上がるほど寒くなってくるのもちょっと変よね。そりゃあ山なら上に上がれば寒いけど……一応建物なんだし、暖かい空気が上いっても良さそうなのに」 と、ため息をつくミローナさんの息は真っ白だ。俺の一歩前に立つクーフは、チラと俺に視線を向けながら答えた。 「……上から陰の気が流れてきているからかも知れないね。氷の魔物が増えれば、当然冷気も増える。その影響かもね」 「成程な。で、ここも魔物は多そうか」 「多いね。……すぐ来るよ」  言いながら既に構えたクーフの目の前には、あのブヨブヨした丸い魔物が跳び上がっていた。見たことあるあの魔物かと思ったが違っていた。こいつは妙に白っぽい。それに気づいて俺は悟った。 「コールドイーターか!」  すごい冷気を持つ魔物で、獲物を凍らせて食う結構悪質な魔物だ。クーフはその魔物めがけて、両手をかざしていた。 『グァンシャ!』  両手から飛び出した光の矢が、魔物の体を貫く。しかしそれだけでは致命傷には至らなかったようで、その両手を構えたクーフの目の前に魔物は跳び上がって着地してきた。勿論クーフはそれをかわすが、あの魔物の形は変則的だ。冷たい冷気を辺りに吐き散らしながら、クーフの間合いに入る。その冷気を受けながらもヤツは手刀を繰り出すが―― 「やめとけ、クーフ!」  言いながら俺は剣をかざし走り寄る。しかし俺の忠告は一歩遅かった。クーフのヤツ、手刀をコールドイーターに繰り出すが、魔物の身体にあたった途端、苦痛の声を上げたのはクーフの方だった。 「……つっ……!」  俺の危惧したとおり、クーフの手に魔物の冷気が直撃し、クーフの肘から先が凍りついていた。「頼むぜ……!『炎精』!」
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