真っ黒

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 思い出の中から抜け出し、私は目の前の妻を見た。 「三人の子育てを、今まで何もしてこなかった事を怒っているのか?」 「違うわ。あなたが、仕事で忙しかったのは分かっています。若い部下を食事に誘って、飲みに行くのも大切な事だと思うから。家族のために頑張って働いてくれたこと。それは感謝してる」  では、何がいけなかったというのか。  勿論、不倫や風俗遊びなどはしていない。大きな喧嘩もない。それどころか、小さな喧嘩すらない穏やかな毎日だった。 「分からないと思う」  妻は断言する。  その言葉通り、私には全く分からなかった。なぜ今、自分が離婚届を突き付けられているのか。  世間には女性に暴力を振るう最低の男だっている。だが私は妻や子供達に手を挙げたことなどない。 「どうしてだ?」
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