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やっとスタートラインに立った気がする。部屋の隅の古時計が示す時間と僕の記憶が正確ならば、ゲームが始まってまだ1時間も経っていないはずだというのに。思わず吐きかけたため息を軽い咳払いで誤魔化した。
「……それでその、少し話がずれるんですけど──」
勿体ぶっているわけではないのは重々承知はしているつもりだが、つい「なんですか?」と催促してしまった。
「いやっ、あの、そのですね……せ、説明の仕方が気になっていて!」
ビクッと肩を震わせた『オーロラ』を見て、悪いことをしたな、と反省する。『灰かぶり』に、やれやれ、と肩をすくめられた。
「説明──……ってなんの説明だヨ?」
そんな僕らに気付いていない『マイア』が柔らかな声音で続きを促す。
ああそうだ。僕もこういう風にすればよかった……。
「ル、ルールの説明です……。『人と組んでもらう』『正しい組み合わせではなかった者はここで敗退』『余った者は──』って……。さっきのゲームの時は『自分が何者かつきとめて』って、そこら辺がちょっと、気になったんです……って、だけなんです、けど……」
いまいち要領を得ない。『マイア』はともかくさすがの『灰かぶり』でさえ首を捻っている。僕もそうだ。
僕らの反応を見て、『オーロラ』はこめかみに汗を垂らしながら、俯いてなにやらぶつぶつと呟いていたかと思うと、バッと顔を上げた。
「あ、の……だから、このゲームって『人と組んで』初めてその者になるのかな──って」
僕は、先の『組んでいるのがバレたら』……なんて思考なんかすっ飛んで、『灰かぶり』と顔を見合わせた。
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