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そうして僕らは、自分から見える名前を申告していくことになった。『髪長』が、全てひらがな順でいいだろうと言うと
「『髪長』『灰かぶり』『マイア』『雪』」
「『オーロラ』『灰かぶり』『マイア』『雪』」
「『オーロラ』『髪長』『マイア』『雪』」
「『オーロラ』『髪長』『灰かぶり』『雪』」
「『オーロラ』『髪長』『灰かぶり』『マイア』」
と、それに順じて申告していったわけだが──。
唐突に、『灰かぶり』が「この中に嘘をついた奴がいる」と口を開いた。そしてサッとワッペンを手で隠した。僕もつられてワッペンを両手で押さえた。メンバー全員もだ。
──しかし僕は、すぐにあることに気付く。
「この中に嘘つきがいる。自分の正体を偽ってる奴がいる」
『灰かぶり』の言葉を僕は聞き流す。──だって、聞いても意味がないから。……これは自分の正体をつきとめるゲームだ。嘘をつくメリットなんかない。正体を隠すメリットも。
では、先程『灰かぶり』が言っていたように、勝敗の判定はどうなるのか? 不正解の者が敗者になるのか? たしかにそれなら勝者も敗者も人数はわからない。
彼の口ぶりと内容をストレートに受け取るとすれば『灰かぶり』は誰かのミスを誘発し、敗者を作ろうとしているようにとることもできるが……僕は『灰かぶり』の狙いはもっと違うところにあるのだと確信した。それこそが、彼が僕と組みたかった本当の理由なのだ。
『髪長』に話しかける直前に僕に囁いた言葉がその合図だったのだ。
『いいか』と──。
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