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あれから六年が過ぎ、ぼくは二十歳になった。
芹沢とは高校も別々になってしまったし、連絡先も知らないため、中学卒業以来、彼女には会っていない。
けれど、今日は成人式。
着慣れないスーツに身を固めたぼくは、さっきからずっと芹沢の姿を探している。女性陣はみな色艶やかな振り袖に身を包んでいて、パッと見では誰が誰だかわからない。辺りをキョロキョロと見回すぼくはハッキリと挙動不審で、いつかの時のように手のひらにじっとりと汗をかいていた。
「オーノン?」
不意に懐かしいあだ名で呼ばれドキッとする。ぼく、大野誠のことを『オーノン』などというあだ名で呼ぶ人物はこの世にひとりしかいないからだ。
バクバク鳴る心臓に顔をしかめながら、ゆっくりと振り返ると、そこには芹沢がいた。赤を基調とした艶やかな振り袖、きれいに結いあげられたまとめ髪に花のカンザシが揺れている。
「せ、芹沢……久しぶり」
「うん! 中学以来だね。元気だった?」
「まぁ、なんとか。芹沢は?」
「見ての通り元気元気!」
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