コクハク様

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 やった!  やったぞ! 『オーノンでも連絡先とか聞くんだ?』  芹沢はそう言って悪戯気に笑い、なんの躊躇もなく連絡先を教えてくれた。快挙である。ぼくの人生はじまって以来の快挙!  成人式を終えたぼくは、その足でコクハク様にお供えする『白いもの』を買いに走った。告白成就のためには、まず、コクハク様に白いものを捧げてから秘密を打ち明けねばならないという決まりがある。  食べ物なら白いおまんじゅうとかになるが、食べ物を捧げた場合は腐る前に回収しにいかなければならないので、大抵の人は白い花を選ぶそうだ。ぼくもそれに習い、どうせならと白いバラを一本購入した。  コクハク様は境内の奥まったところへ奉られていて、鬱蒼と木の生い茂る中にポツンとある小さな祠はいつ見ても不気味だ。辺りに人がいないことを確認し、備え付けの花瓶へと白いバラをそっと挿す。
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