コクハク様

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 その瞬間(とき)だった。  彼女の真っ白なドレスに、黒い染みが広がっていく。 「え……?」  口を手でおさえる彼女の白い手袋も黒く染まり、異変に気付いた誰かが悲鳴をあげた。咳き込むようにしながら、彼女の口からどろっとした黒い液体がぼたぼたとこぼれ、真っ白なドレスを黒く染めあげていく。 「陽花! どうしたんだ? 大丈夫か!?」  ごぼごぼと黒く粘っこい液体を吐き出すと、彼女は白目をむいてその場に倒れてしまった。ピクンピクンと痙攣する手足。天国のような幸福感から、ぼくは一気に地獄へと突き落とされ──芹沢陽花は還らぬ人となった。
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