コクハク様

9/17

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「どっちにしてもアッキーは猫を飼えなかったわけでしょ。そんなに悲しむんだったら、さっさと保護猫団体の人に引き取ってもらえば良かったじゃん。そしたら、あの猫だって今ごろはどこかで幸せに暮らしてたかもしれないのに」  芹沢の言うことはもっともで正論中の正論である。でも、あまりにも芹沢らしかぬ冷たい物言いに、思わず視線を芹沢へと向けてしまった。バチッと目が合い慌てて逸らす。 「ヨッチ、それはさすがにひどいよ。アッキー、帰りに探しに行こう?」  橋本はほかの女子に慰められ、泣いているのかうつむいたままでうんうん頷いている。一体、芹沢はどうしてしまったのか。以前の芹沢なら、一番に「一緒に探そう」と言うはずだ。今の芹沢は、まるで猫が死んでしまったことを知っているかのような──そんなバカな!  ふっと、ある考えが頭に浮かんできて、ぼくはぶんぶんと首を横に振った。バレンタインデーに告白が失敗した芹沢。相手は誰か知らないが、打ち明けた秘密が軽すぎて釣り合いがとれていなかったとしたら? それに見合う秘密をもとうと、友達がかわいがっていた野良猫を殺したとか……?
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加