浦島太郎もビックリ⁉️(1)

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浦島太郎もビックリ⁉️(1)

 1 私は、ある女性から玉手箱の様な物をもらった。 箱全体が黒の漆で覆われ、蓋には金色を中心に赤と青で描かれた 鳳凰の様な鳥が空を舞っている。 その絵は、気品があり、まさに生命を吹き込まれたかの様に 描かれている。 「今にも、飛び出して来そうだな」と、独り言を言う様に、 女性に向かって言ったのだが、 その女性は、「貴方には、大変お世話になりました。 私の、感謝の気持ちでこの箱をプレゼントいたします。 でもこの箱は、観ているだけです。 絶対に蓋をとってはいけません。 開けてはいけません。 よろしいですか? 守っていただけますか?」 「貴女は、私に世話になったと言うけれど、私は貴女に会ったのが 今、初めてなのですが?」 すると、その女性は、 「そうですね。今、初めて貴方にお会いしましたね。」 と、平然と語る表情に、私は彼女に一抹の悲しさを観た。 何故、悲しそうな顔をするのだろうか? 不思議に感じたのだが、気を留めずに、 「何故、初めて会った私にこの様な、高価な物をくれるのですか? それに、何故 蓋を開けてはダメなのですか?」 と、私は素直な気持ちで女性に尋ねた。 私を見つめるその瞳は、潤んでいた。 「その事は、聞かないでください。 でも、私は貴方に助けてもらったのです。」 「意味が解りませんが、今 会ったばかりの人を、私がどの様に 助けたのですか? 」 「これ以上は、聞かないでください。私は帰らなければいけません。私の後を追いかけてきてはいけません。 さようなら!」 と言って、彼女は私の顔を見ながら、ゆっくりと後退さりを始めた。 「一寸待って下さい。意味が分からない一寸待って!」 追いかけ様にとする私は、彼女に催眠術をかけられているみたいに 全く、足が動かない。 そして彼女は、振り返る事も無く逃げる様に走りだした。 彼女の後姿を見送りながら気がつくと、私のいる所は見知らぬ 場所である。 「いつのまに、こんな所に来たんだ!?」 と、自分で自分に問いかけながら、何があったのかが、思い出せない。私は、夢の中から出てきたかの様に思えてならなかった。 「一体此処は何処であろうか?見たことも無い所だが? 今日はいつ何だ!さっぱりわからない!」 私は、周りの風景を見渡した。 今までに見たことが無い、高い建物が乱立している。 轟音を上げて、走って来る四つのタイヤの乗り物。 人達の風貌を見たらみんな西洋の服を着ている。 自分も西洋の服を着て居る。 「可笑しいな!いつ僕はこんな西洋の服を着たんだ? もしかすると、此処は異国だろうか?」 ポケットの中を探ると、四角い物入れがあった。 「何だ、これは?」 開けて見ると、紙が何枚も入っている。 よく見ると1万円と書いてある。 「西洋のお金か?こんなの見たこと無いが、日本のお金かも知れないな」 と、独り言を言う僕に、可笑しさを覚えたが、不安は更に深まっていった。 「此処は異国では無い。日本だ!通り過ぎる人の言葉で解る」 と、私は少し安堵したが、通り過ぎて行く人達で知っている人は、誰もいない。 「一体何故、こんな事になってしまったんだ。」 私は必死に想い出そうと試みたが、それも徒労に終わった。 ………今は、何時頃なんだろうか?お昼の様に思うが…… 道行く人は、慌ただしく過ぎ去っていくが、 僕は通りすがりの若い男の人に時刻を訊ねた。 「今ですか、」 と男は、何か四角い物を見ている。 「今、14:23ですね」 と、四角い物に書いてあるみたいだ! ……何だろう、この四角いものは、時計だろうか?…… 私は、驚きを隠せなかったが、平静さを装いながら、 「あの、今日は何日でしょうか?」 と、聞いてみた。 その若い男は、怪訝な表情に変わった。 「何日って、どうかしたのですか?今日は3月の9日ですよ」 と、自分が揶揄われているかの様に思ったみたいだ。 ……一体、何年の3月9日だろうか?…… と、疑問に思ったが。これ以上聞くのは辞めにした。 「ありがとうございます。少し記憶が飛んだみたいで、 変なことを聞きましたね。ごめんさい」 男は、少し納得した表情を浮かべて、去って行った。
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