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二人が歩道橋を降り、銀行の建物の脇に座る老人がチラッと二人に視線を向けてから立ち上がり、その場を離れて行く。
その後を心配なのか、ゆらのが走り出す。
老人が去った場所の近くにはコンクリートで造られた花壇があり、僅かな幅のある縁は座る事が出来るくらいだ。
あの老人もここに座って一休みをしていたのだろう。
その花壇は高さは腰下くらいまであり、幅は1m、奥行きは70cmほどあり、何の植物かはわからないが、隙間なく植わっていた。
ゆらのは、慎司が指摘した花壇を隈なく探すと、花壇の下、僅かな隙間にピンク色の財布が落ちていた。
「あったぁ!」
思わず嬉しそうな声を挙げるゆらのに、慎司は後ろから「良かったですね。見つかって」と答えた。
ゆらのは財布を手にすると、財布の中を開いて中身を確認する。
「あの・・・。報酬は3割という事でしたが・・・」と寂しい声を出す。
慎司はゆらのからは視線を外し、歩き去って行く老人に向かって視線を向けていたが、ゆらのに視線を戻すと、「えぇ・・・。3割で良いですよ」と優しく答えた。
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