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午後3時過ぎ。
一人の女性候補者がバス通りに停めてある車両から、階段を上がって街頭演説車の舞台に登ると、周囲にいる有権者たちから拍手で迎えられた。
「港区の皆さん。本日はこのような・・・」と左手にマイクを握りしめ、候補者演説が始まる。
街頭演説が始まった駅前広場から少し離れた小さな立ち食いそば屋。
もう100年以上昔から老夫婦2人で営業を続けている店から、「ごちそうさん」と素っ気ない言葉を吐いて、一人の若者が店を出て来た。
歩道を歩く人たちは、その彼がこれから行う事など、今は気にしていない。しかし、彼がこれから行おうとしている事は、そんな些細な事では無く、国家運営に関わる重大な事だった。
彼は背中に背負っているカバンを軽く背負い直すと、ゆっくりと周りの歩行者に混じって歩き出す。
彼の目は、さっきの素っ気ない言葉とは裏腹に、今度は何かを企んでいる険しいな目つきに変わっている。
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