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環境大臣の応援演説を横目で見つめながら、若い青年は肩から下ろしたデイパックを片手で持ちながら、群衆の間を縫うように歩く。
青年の視線がふと、環境大臣長谷川氏の背後にいるSPに向けられる。が、それは彼らの人数とかではなく、この場から移動する時間の確認や動きの確認をする行動予測への視線だった。
そうこうするうちにSPの動きがにわかに慌ただしくなってくる。
青年は長谷川大臣に目を向けると、女性候補者の川島氏と笑顔で握手する姿が目に入った。
「短かったな・・・」
青年の背後から聞き入った声が聞こえた。
「フレア・・・。いつにこの国に?」
青年は振り向きもせずに、背後に立つ髪を赤く染める青年に尋ねた。
「さっき。エアがそば屋から出てくる姿も見ていた」
エアと呼ばれた青年の歩みが止まる。
「僕を監視していたのか?」
エアは長谷川から一瞬、目を離すと赤い髪の青年、フレアに鋭い視線を向けた。
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