まつりのにわ

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 音楽室に行くと、先輩からアルト・サックスを渡され、二人並んで吹かされる。初めて楽器を吹く陽太は、咥え方と持ち方から指導されていた。    ドレミファソラシドと簡単な音階を吹いた。数ヶ月ぶりに吹くサックスはアンブシュアが安定しなかった。   「おっ!キミ経験者?」男性の顧問らしき先生に声を掛けられた。 「はい、中学だけですけど……」 「ぜひ入って!貴重だからね」  その会話を隣で見ていた陽太からは、羨望の眼差しを向けられていた。 「どうなってんのこれ!音、出ないぞ?」 「うーん、口締めすぎかも。アンブシュアって言うんだけど」 「でた、専門用語」と拗ねた陽太がからかってくる。 「もう少し、マウスピース深く咥えてみて。力入れすぎずに、そう」  他の新入生対応に追われている上級生に代わり、晴翔が陽太に教えた。  ブー!  半音近くピッチの低い開放のC#が、教室内に響き渡る。 「でた!」二人は声を合わせて歓喜した。 「ハル、楽器楽しいな!」という陽太が言い、楽しそうに同じ音を吹いた。  晴翔は心の奥底が温まった感覚に包まれた。  
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