まつりのにわ

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 他の楽器も経験したあとで、二人は夕暮れの中歩いて帰路についた。  盛岡駅に着くと、晴翔は北行きのIGRいわて銀河鉄道、陽太は県交通のバスで家に向かう。 「じゃあ、俺バスだから。また明日!」と背を向けた陽太。 「待って!」  晴翔は勇気を出して声をかけた。 「ん?」 「陽太くんは、吹部入る?」と晴翔は聞いた。  声がうわずり、掠れる。自分から友達に声をかけたことなんて、記憶にない。  陽太は「ハルは?」と微笑んで聞き返してきた。 「中学でやめるつもりだった。けど、陽太くんがやるなら、続けようかな」  陽太は「よろしく!」と大きな声で手を握ってきた。力を込めて握り返した。高校で初めてできた友人の温もりは、今でも覚えている。  少し肌寒い、盛岡駅の滝の前広場が、少し暖かく感じた。  六月上旬、降り続く梅雨が雨戸をノックする音で、夜中に目を覚ました。 (夢……)   最後に陽太と話したの、いつだっけ。  それすらもう思い出すこともできない。数年前、喧嘩別れしてそれっきりだ。湿気と混沌とした感情が、身体の内外に纏わりついて来た。
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