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「心残りが多かろう。弔問は?」
「はい、水曜にご実家と連絡を取りました。明日一関に向かいます」
「一関のどの辺りなんだ?」
「厳美町です」そう答えると、課長は難しい顔で何かを考え「マツルべって知っているか」と呟いた。
「え?」
聞き慣れない言葉に思わず聞き返してしまった。
「祭という漢字に、田へんに寺で祭畤」と空に文字を書く課長。
「初耳です」
「厳美町の山奥深くだ。道中、大地震で倒壊した橋の遺構がある」
「すみません、浅学で」
課長は「旅館もある。宿を取るなら、一度調べてみると良い」と言うと、役所前に到着したバスに気が付き、また月曜と駆けて行く。
「聞いていただき、楽になりました。ありがとうございます」
課長は振り向きざまに微笑み、バスに乗り込む。晴翔はそれを見届け、駅まで歩いた。
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