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「あ、またどこか行って来ましたね」
マスターは希美のウインドブレーカーを着て、キャップを被った山歩きの服装を見て、そう言いながら、希美に温かいおしぼりを手渡した。
いつもだが、いったいどういうつもりなのかと思いながら、希美はそれを受け取る。
他の客には、おしぼりを手渡ししたりしないのを、希美は知っているからである。
けれどもこの若いマスターは、いつも希美には手渡しするのである。
しかしそれをズバリと訊くほど、希美は女としての可愛げが無くなったわけではない。
ハイキングに参加した後、この店に寄って、温かいおしぼりをもらうのは正直言って、この上無くホッとする瞬間でもあるのだ。
「ちょっとね・・・カフェラテ、ホット」
希美は少し照れた笑みを溢して、カフェラテを注文した。
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