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「いやん、ユウくん、そんなの恥ずかしい」
テーブル席に座っていたカップルの若い女が、恥ずかしいと言いながらも、恥ずかしげも無く周りに聴こえるように、黄色い声を上げる。
そしてそのユウくんがボソボソと若い女の耳元で囁くと、また黄色い声を上げているのだった。
希美は全くそんなやりとりが、耳に入っていないかのように振る舞い、マスターに出されたカフェラテのカップを持ち上げ、一口啜った。
もう11月になっていた。
朝晩はだいぶ冷え込み、戻ったばかりの山の樹々はだいぶ葉を落として、冬山の様相に変わってきていた。
ハイキングはもう、今年の予定は無かった。
温かいカフェラテが、希美の胃に流れ込み、内臓から冷えた希美の身体をジンジンと温めた。
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