ひとり上手

3/23
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「いやん、ユウくん、そんなの恥ずかしい」  テーブル席に座っていたカップルの若い女が、恥ずかしいと言いながらも、恥ずかしげも無く周りに聴こえるように、黄色い声を上げる。  そしてそのユウくんがボソボソと若い女の耳元で囁くと、また黄色い声を上げているのだった。  希美は全くそんなやりとりが、耳に入っていないかのように振る舞い、マスターに出されたカフェラテのカップを持ち上げ、一口啜った。  もう11月になっていた。  朝晩はだいぶ冷え込み、戻ったばかりの山の樹々はだいぶ葉を落として、冬山の様相に変わってきていた。  ハイキングはもう、今年の予定は無かった。  温かいカフェラテが、希美の胃に流れ込み、内臓から冷えた希美の身体をジンジンと温めた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!