ひとり上手

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 厨房の母親は、こうして時々息子を嗜めるが、本当は息子が大好きである。  そうでなければ、朝から晩まで息子と一緒に仕事をする気にはならないだろうし、料理の注文が途切れた時などは、店内に出て来て、マスター然としてきた息子を、惚れ惚れと優しい目で眺めている時があるのだ。  時々黄色い声を上げているカップルの所に、出来立てのBLT焼きサンドをトレイに乗せて、マスターは運んで行った。  悪くないチョイスだと、希美は思った。  マスターのお母さんが作るここの焼きサンドが、BLTの他にも焼きたてのふわふわタマゴが入っていて、この上なく美味しいのはおそらく、市内でも知れ渡っているところである。  希美はまたカフェラテのカップを持ち上げ、少し息を吹きかけ、立ち昇る湯気の香りを嗅ぎ、湯気で顔をテカテカにしながら、二口目を飲んだ。  焼きサンドの給仕を終えて戻って来たマスターは、希美と目が合うと、バツが悪そうな顔で、母親に嗜められたことを、恥いっている様子だった。
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