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序章 雪降る冬の断頭台
真白の雪が降りしきる、石畳の広場。響く音といえば喧騒にも似た狂気と愉悦の声。
リトヴァの眼前に見えるのはどれもこれも代わり映えのしない「人間」の顔。今のリトヴァにとって、見える世界は色を失ったモノクローム。自分の知る者も知らぬ者も、もはや自分に彩りを蘇らせてくれはしない。
寒空の中、歩むリトヴァは思い出す。自分の見る世界が鮮やかに色づいていた時を。
その手に残る血の暖かさと、徐々に冷えていく肢体。
女の亡骸を抱くリトヴァの口元には笑みが浮かぶ。流す涙は歓喜のそれ。
愛した彼女の命をこの手で奪ったことで、狂おしいほどに餓えた心にようやく恵みの水が与えられた。
どれほどそうしていただろうか。
感涙にむせび笑うリトヴァの耳に、不躾で騒々しい足音が響いてくる。
自身を捕らえるために踏み込んできた警官たちの表情はいずれも硬く、この素晴らしい「庭」を嫌悪すらしているように見えた。
それを見て、ようやく理解する。
自身の抱くこの「愛」は、この世界に受け入れられないのだと。
聴衆の取り囲む広場の中央には立派な断頭台。後ろ手に縛られたリトヴァは特段抵抗することもなく、その中心へと連れられていく。
リトヴァは世界に、人に、おもねるつもりはなかった。
このまま生きながらえたところで、きっと自分はまた同じことをするだろう。
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