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「あーごめんね美優紀ちゃん!LINEグループ、急に引っ越すことになっちゃって!なんか、話がグダグダしてきちゃったから、作り直そうってことになって」
彩芽ちゃんは、ごめんねえ、と笑顔で手を合わせてくる。彼女が動くたび、ツインテールのリボンが揺れる。真っ赤な色が、可愛いというよりちょっと不気味だなといつも思っていた。視界にちらちらと過るのが、少し目障りだと言うべきか。
「美優紀ちゃんにも事前に教えたつもりでー、忘れちゃってたっぽい!次に新しいLINEグループ作ったらまた教えるから、ね!」
「……うん。それならいいけど」
作り直すために、グループを潰したなら。普通はすぐに次のグループを立て直すはずだ。それなのに、新しく立てたであろうグループに自分を招いてはくれないんだな、なんてことを思ってしまった。
――だ、駄目、駄目。彩芽ちゃんを疑っちゃ。
頭の中に浮かんだ考えをむりやり振り払う。仲間外れにされたわけじゃない、ちょっとした連絡の行き違いだ。ちゃんと謝って貰ったのに、それを許さないなんて心が狭すぎる。きっとまだ、本当に新規に立て直していないだけ。次に立てたらきっと自分も入れてくれるし、その時を待てばいいだけのことだ。
そう、騙されてなんかいないのだ、自分は。
うっかり彩芽ちゃんが私の消しゴムをゴミ箱に捨ててしまったことも。彩芽ちゃんたちが掃除の箒を独占して、私は冷たくて辛い雑巾がけ担当になってしまったことも。みんながやりたがらない係に彩芽ちゃんから推薦されたことも全部――そう、全部悪気なんかないはずなのだ。
疑ってはいけない。疑ったりしたら、自分は。
「おい、羽丘。ちょっと来いよ」
「えっ」
彩芽ちゃんが友達とお喋りを始めてしまったところで、急に腕を掴まれた。見れば、去年も同じクラスだった加瀬怜羅くんが怖い顔で私を見ている。
加瀬くんには、去年かなりお世話になった。一緒にポスター係をやっていたので、喋る機会が多かったのである。女の子のように可愛い顔をしていて小さいのに、かけっこは早いし力持ち。女子にもきっとモテるタイプだろう。
「な、何?加瀬く……」
「いいから」
「ちょ、ちょっと!」
加瀬くんは無理矢理私を教室の外に連れ出した。まだ先生が来るまで時間はあるとはいえ、廊下に出る必要がどうしてあるのだろう。
彼は階段の影まで来ると。
「お前、佐藤たちといつまで付き合ってるつもりなんだよ」
そんなことを言い出した。ちなみにクラスには、彩芽ちゃん以外に佐藤姓はいない。
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