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「あいつ、声がでかいから話がまる聞こえなんだよな。LINEグループでハブられたって?そんなのばっかじゃねえか」
「……間違えちゃっただけだよ、彩芽ちゃん。ちゃんと謝ってくれたもん」
「間違えただ?お前一人残して、他の友達全員退会するのが間違えたになるのかよ。この間だって、一人で雑巾がけ押し付けられてたじゃねえか。お前、佐藤にいいように使われてるだけだって気づけよ。あんな奴らと友達でもなんでも……」
「やめてよ!」
私は思わず声を張り上げていた。加瀬くんは、本気で私を心配して言ってくれているのかもしれない。でも、私にとっては大きなお世話だった。だってそうだろう。
「友達だよ。彩芽ちゃん達は……友達だもん」
震える声で私は告げる。
「ちゃんと、班分けとか、グループ分けで仲間に入れてくれるもん。友達じゃなかったら……入れてくれないでしょ?」
「それはあいつらが奇数だからだろ。ていうか、お前があいつにくっついてるのはそれが理由か」
「だって!クラスに……他に友達いないんだもん!ど、どこのグループにも入れないなんてことになったら私、一人ぼっちになっちゃう。先生に仲の良い人同士でグループ作ってくださいって言われる時も、みんなで席替えを決めてくださいって言われる時も……わ、私、ハズレくじになっちゃう。そんなの絶対嫌……!」
加瀬くんはいつも明るくてたくさん友達がいるから、わからないのだ。私みたいに根暗でなんの取り柄もない子は、とにかく誰かにくっついて孤立しないようにするだけで必死なのである。
そう、クラスに一人も友達がいないと。グループワークも、班分けも、どれもこれもあぶれて惨めな思いをすることになる。二年生の時のクラスがまさにそれだった。もう二度と、一人でぽつんと教室の真ん中に取り残される経験なんてしたくないのだ。
だから、無理矢理にでもしがみつくしかないのである。
彩芽ちゃんが――本当は私のことをうざったく思っていて、いなくなるのを期待しているかもしれないとしても。
「彩芽ちゃん達が友達じゃないなら、友達ってなに?どうやって作るの?」
そんな当たり前のこともわからないなんて、私は本当に出来損ないだ。自分でもわかっているけれど。
「私が相手のことをどんなに好きになろうとしても、向こうに嫌われちゃったら友達じゃないでしょ?だから、友達っていうのは、とにかく相手に嫌われないようにしなきゃいけない存在でしょ?嫌なことも我慢して、嫌がられることは何も言わないように気をつけて、それで……」
「そんなの友達とは言わない」
「!」
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