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「本当の友達ってのは、喧嘩したり、嫌なこと言っちまうことがあっても……ちゃんと仲直りして許しあえるやつを言うって俺は思う。お前が一方的に我慢して気を使うのが友達なんてそんなことあるか」
「で、でも!私も気を遣わせてるかもしれないし、私鈍臭いからきっと知らないところで嫌な思いばっかりさせてて、それで……っ」
「だから!なんでそういう発想になんだよ!」
ああもう!と加瀬くんは、呆れたようにため息を付きながら言ったのだ。
「俺はお前のことを友達だと思ってるけど、お前は違うのか?でもって、俺、お前に変に気を使ったりとか全然してねーけど!?」
「!」
私は目を見開く。まさか男の子に、友達だと言ってもらえるなんて思ってもみなかったからだ。
「去年のポスター係、めっちゃ楽しかったぞ。羽丘が描いた4コマ漫画ちょー面白かった。インタビュー記事とか、俺が聞いてきたやつをすっげー楽しくまとめてくれてて良かったし。……お前と一緒にやれて良かったってマジで思ったんだよ。だからもう友達のつもりだったんだけど、ちげぇの?」
「……友達になってくれるの?私と?」
「じゃなくて、もう友達だと思ってんの!お前は!?……俺がそうだって言ってんだから、“友達だと思われてるかわからないから、友達なんて言えない”なんてのはナシだからな。お前の気持ちの問題!」
「……うん」
わけがわからなかった。加瀬くんみたいな人気者のイケメンが、どうして私みたいなドジで間抜けで駄目な女の子を気にかけてくれるのだろう。去年たくさん話したけど、たったそれだけなのに。
――こんな都合の良いこと、あるわけない。
また、彩芽ちゃんみたいに私を騙すのかもしれない。信用させて、信頼させて、そして突き放すつもりなのではないか。それこそ、こうやって話しかけるのだって実は誰かの仕組んだ罰ゲームだったりするのではないかと不安になってしまう。
でも。
少なくとも今日は、エイプリルフールではない。そして去年、確かに加瀬くんは――一度も私を、裏切って、いない。
信じてみてもいいのだろうか。こんなにも、裏切られるのが怖くてたまらないのに、性懲りもなく。
「……よし」
俯く私に、加瀬くんは優しく語りかけてくれる。
「次の席替えで、証明してやる」
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